法然院サンガ: 002
法然院サンガからのご案内
N-0002-J
「アタラクシアの森」シンポジウム
真価の地平へ−ア−トによる健やかな回路との出会い−
1996年6月1日(土)14:40〜
シンポジウム会場 法然院方丈
ほんとうの豊かさとは何か?ひとを豊かにするア−トとは?
京都・善気山麓にある法然院を舞台に開催されたプロジェクト「アタラクシアの森」 では6月1日、「真価の地平へ−ア−トによる健やかな回路との出会い−」と題して シンポジウムがおこなわれた。 集められたパネラ−は、ア−トの分野からだけでなく、法然院貫主ほか、環境教育の現 場の担当者もならび、「自然環境」「精神科学」「地域社会交流」の3要素を有機的 に結びつけ、より開かれたア−トのかたちを考えようとするプロジェクトの趣旨を強 く感じさせた。
シンポジウムでは、各パネラ−から、まず、今回公開されたインスタレ−ション「CU LTURE-F 1996」に対する受けとめ方、あるいは取り組み方がを述べられ、また、Rose mary Wright氏からは、ア−トセラピ−に関するスライドが公開されるなど、各専門 分野からの報告等を含めたア−トと自然環境、社会との関わりについて考えが述べら れた。
・パネラ−
(左より)
和多利浩一(ワタリウム美術館学芸員)
Rosemary Wright(川崎医療福祉大学教授/美学・ア−トセラピ−)
梶田真章(法然院貫主)
(左より)
久山喜久雄(法然院森のセンタ−/フィ−ルドソサイエティ−代表・環境教育)
不動美里(ガイアドラム主宰/岐阜県技術アドバイザ−・民族芸術学)
中前寛文(美術家)
単なるイベントの会場としての法然院でなく、全てが法然院という場を出発点とした ような、作品、パフォ−マンス、シンポジウム等の内容構成の方法が、このプロジェ クトにこれまでにないオリジナリティ−を与えたとおもう。だが、それだけに、はた してこのシンポジウムが、「真価の地平」をどれほど近くするものであったかは、来 場者それぞれの胸のうちのかぎりというほかない。各パネラ−からだされた意見は、 そのほんの手がかりの部分といえるだろう。
むしろ注目したいのは、地域社会や自然環境へのアプロ−チがア−トからなされたこ
とである。プロジェクト「アタラクシアの森」は、人間の精神と密接しているようで
ありながら、いつしか、人間環境のリアルからとりのこされ、自閉症的成長を遂げた
現代のア−トをふりかえり、新たなア−トの必要性と可能性を見直す、ひとつの試み
であるようにおもわれた。「教育でもなく、宗教でもなく、ア−トが今、出来ること
は何か?」という総合キュレ−タ−谷悟氏の言葉が印象的であった。
・コ−ディネ−タ−: 谷 悟( IALキュレイタ−)
(*1)シンポジウムのなかで、不動美里氏がコンテンポラリ−ア−ト的だと語った 法然院の白砂壇。水のなかった時代、ひとは浄域へ入るための清水を白い盛砂で表現 し、心身を清めた。江戸時代、人間の精神と自然とをつないだア−トがここに残って いる。
(TEXT&PHOTOS:NISHIYAMA Masako)
森を観る−スキャンニングプロジェクト’96
1996年5月26日(土)・6月2日(土)
イメ−ジの宝庫、法然院の森に入り、収集したビジュアルデ−タ(スケッチ・写真) を法然院にて再構築・展示するこのワ−クショップには、周辺校区の小学生やフラン スから来日中であったコンテンポラリ−ア−ティスト、ピエ−ル・アラン・ユベ−ル 氏も参加した。
・区画された30センチ角を観察エリアとし 情報を感知・採集する
・ワ−クショップに参加した仏ア−ティスト、ピエ−ル・アラン・ユベ−ル氏
(PHOTOS:IAL)
アタラクシアの森「CULTURE-F 1996」&パフォミングア−ツ
−インスタレ−ション「CULTURE-F 1996」について
・ワタリウム美術館学芸員 和多利浩一氏のコメント
「1人の個展として考えるならば、この法然院という場をよくいかしてつくられたプ ロジェクトだとおもいます。3人くらいの作家の作品が展示されれば、なおいいです ね。お寺という空間のなかにあのようなデジタルのものをもってくる。それと自然と をつなげていく。つまり、デジタルがひとつの媒体になって人間と自然とをつなぎ、 それがア−トの役目として機能しているという意味で、よく出来ているとおもいます 。また、まわりの風景との兼ねあい、まず、門を入っていって異次元のお寺の空間が ある、さらにその中の建物に別の空間がある、という3段階のバリエ−ションも、と てもよく出来ていますね。」(1996.JUNE.1)
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